Sunday, September 06, 2009

天使と悪魔のDNA (3)

先日,たまたま肉片が一切れ余ったので,ぐれぐのフードにだけこっそり追加したことがある.犬同士は互いに見えないように仕切られてるので問題無かろうと判断したのだが,果たして誰も気づかず(あるいは気にせず),ガツガツと自分の分を平らげてくれた.

そーそ,犬はそれでよろしいと満足して立ち去ろうとすると,目に入ってくるのがぺぐ.
自分のフードに見向きもせず,ぐれぐの方角の仕切り板をじっと睨んだまま固まっている.そして,わざとらしくゆ~っくりとこちらを振り向く.
どこでどう察したのか,ぐれぐの特別待遇を見破った上に,プチハンストで遺憾の意まで表明してみせたのだ.
まぁどうでもいいことかもしれないが,一事が万事そんな感じで,ちょっとずつ引っかかる.
とにかく,この犬は一筋縄ではいかない.

おバカ天使のきゃすと小悪魔ぺぐ.
とても同じ両親から生まれたとは思えない.
...というのは実はウソ.
まさに血のつながりとしか言いようのない,しっかりと共通する何かがある.
もちろん濃淡はあるが,特に家族や動物に向ける態度にそれを感じる.
それを言葉にするのは難しい(てゆーか,迂闊にはしたくない)が,まさしく私たちが望んだものを両親から引き継いでくれている.

だから今,,,意思の弱い男はノーガードで打たれっぱなしである.
せっかくの居住ルールも風前の灯だ.
 

天使と悪魔のDNA (2)

さて,頭数が多いとどうなるかというと,必然的に,一頭一頭にかける時間は短くなる.
食餌は同じものを一斉に出すだけだし,トイレはまとめて裏庭に放流して,頃合を見てばーっと回収する.
自主性と協調性を育むためとか,地震の災害訓練を兼ねてとか理由はいろいろだが,基本的には面倒だからだ.

こういうときは一々余計なことを考えず,流れに従ってくれる犬が素敵だ.
例えばきゃす.
彼女は一応,娘の犬ということになっているが,クラブで忙しく思いの他薄情な主人からは何も教えてもらっていない.だから呼びのコマンド一つ知らないのに,周りの犬がだーっと駆け寄ってくると,あわててみんなに付いてきて,そのままだーっとケージになだれ込んでくれる.
たまに,入り口を閉められてから「えっ!?私,ハウスしちゃったの?」てな顔をしてるが,フフフもう遅いのだよ,おバカちゃん.

これと真逆路線を行くのが同胎犬のぺぐ.
他犬と駆けてくるまでは一緒だが,部屋に上がる直前で立ち止まり,そして考える・・・「このままみんなに付いていくと,私の運命はどうなるんだろうか?」
片腹痛い.
あるいは,途中から一人だけコースを逸れ,物置の裏に潜り込んでウツボになる.そうやって時間稼ぎしながら,あわよくば遊びに引きずり込もうという魂胆なのだ.
いつも決まってそうなら,対処の仕方はいくらもあるのだが,これがある日を境に急に態度を改めたりするもんだから,事はそう単純じゃない.


つづく
 

天使と悪魔のDNA (1)

10年前には想像もしなかったことだが,今,5頭のコリーと同居している.
室内飼いなので,一つ屋根の下に犬5頭と人間2.2人が棲息しているわけだ(週末の男=0.2).

そう書くといかにもだらけた感じだが,居場所には一応のルールがあって,居間やキッチンは人間の占有スペースということになっている.
ただし家主の性格そのままに運用はユルい.せいぜい,「ここは人間の領分なんだから,ちょっとはわきまえなさいよ」くらいな感じ.

特例として,最年長であるさん=アニキは居間での寝起きが許されている.
別に身体の調子が悪いとか,隠居させたというわけじゃない.土間に放置しておくと緩慢に家が壊れていくからである.
この待遇を彼がどう思ってるかは知らないが,日がな一日,Hiroの足元やソファで寝そべっている.

カイラは特技の人たらしの術(遠くからウル眼で見つめて耳をピコピコさせるとか,足の甲に乗って後頭部を脛にくっ付けるとか,膝の上によじ登ってヘソ天で鼻鳴らすとか)を駆使して,いつのまにか侵入していることが多い.
何とかケジメは付けたいが,この攻撃に百戦百敗の意志の弱い人間が約0.2名いて,すぐに居間に上げてしまう.
まぁこの世には,人の力ではどうしようもないこともある.

つづく
 

Wednesday, January 28, 2009

町内犬地図 (4)

最近は本当に野良犬や放し飼いの犬を見なくなった.
ファームのある田舎でさえ,犬たちはもれなく繋がれている.
先日,たまたまリードが外れて,田舎道をブラついている犬を見かけた.
何だか激しく懐かしい気がした.
そして自分でもびっくりしたことに,知らず知らずのうちに右手が胸ポケットを探っていたのである.


最後に,悪い癖ですが「替え文」を一つ(これがやりたかっただけだったりして).

***
 ボーダーコリーの問題は「きりがない」ことだ。
 ボーダーコリーは確かに、お座敷犬やショードッグに比べれば品のない犬だが、逆にいえば、この犬はイヤというほど汚れることによってはじめて犬たり得る犬だ。こっちの身体が痛くならないと作業した気にならないのだ。ボーダーコリーにほどほどはない。やり足りないか、やり過ぎるかのどちらかなのだ。
 しかもボーダーコリーは、自宅の室内はもちろん、庭でも公園でも車の中でも、旅行や買い物や仕事にも、着いてくる。ボーダーコリーは私が行くあらゆる場所に、あまねく存在し、私に向かって、
「さぁ遊びますよ」
と呼びかけることをやめない。
「勝手に遊んでやがれ」
と、思うときもあるが、そうやって一途に私を見つめて待ってくれているものを、拒み続けることができるだろうか。
 救いのない話ですまない。そう。お察しの通り私はやつらを無視しながらこれを書いている。本当にうざい。
***

おわり
 

町内犬地図 (3)

話がずれた.
とにかくその頃には町のあちこちに親交のある犬がいて,彼らと挨拶を交わすことが日課だった.
そのおかげで,幼なかったまろ少年は,随分と気分的に救われていた気がする.

子供は気楽で良いと言う人もいるが,そんなこともないと思う.
大体子供なんて,勉強とか行儀とか,つまらないことばかりさせられている.ほんとうに怒ったり喜んだりできるのは(つまり本当に物事を楽しめるのは),年を重ねていろんなことが見え始めてからだ.
そのくせ,生きることへの不安とか混乱は,大人と同じか,むしろそれ以上に感じている.実際,子供は庇護されないと生きていけないんだし,知識や経験を使って,わけのわからない不安から目を逸らす術も知らない.何より,言葉を操ってその不安や混乱を人にパスすることができない.

皆ではないにしろ,そんな子供にとって,街のあちこちに知り合いがいるというのは,実はとてもありがたいことではなかったかと思う.
少なくとも自分はそうだった.
飼い犬も含めて,彼らは決して幸せには見えなかった.幸せどころか,生きるか死ぬかの瀬戸際というようなのも少なくなかった.そんな彼らが,それぞれの厳しい生活を背負ったまま,うれしげな顔で,たまに出会うだけの少年に親しみと礼儀を示してくれるのである.
たまたま,特に気の良い2,3頭に出会えただけで,その日一日,町や社会に受け入れられた感じがすることもあった.
大人にとって取るに足らないことかも知れないが,そんなことを経験できる機会は,多ければ多い方がよいと思うのである.

(4)に続く
 

町内犬地図 (2)

自分を振り返ると,物心ついてから今日まで,大体において犬は好きだったけれど,ピークは小学校3年の頃だったと思う.その頃は,頭の中に「犬地図」があった.その地図には,町内のどの家に犬がいるかだけでなく,どこの犬は人懐っこいとか,どこの犬は冷たいとか,そして大事なポイントとして(その家の人から怒られるか否かを含めて)どこの犬が外から触れるか,といったことが,きめ細かく書き込まれていた.

飼い犬だけじゃなく,野良犬に会える場所にも詳しかった.お宮さんとか原っぱとか壊れかけの空き家とか,当時はそんな「野良犬スポット」が結構あった.
そして,学校に行きたくなくて家でぐずぐずしていると,犬地図のいたるところから知り合いが顔を出し,そいつらが一斉に「○○君,つまんないよぅ」と語りかけてくるのである.おかげで遅れずに家を出ることができた.ただ,あちこちの犬に挨拶しながら歩くので,やっぱり遅刻してしまうのだけれど.

前にも一度書いたことがあるが,外に出かけるときにはいつも,上着の胸ポケットに一握りのだしジャコを入れていた.知り合いへの挨拶だけでなく,警戒心の強い犬や愛想の悪い犬を手なずけるのに使った.たまに自分のおやつになることもあったけど.

たまに,そのジャコが胸ポッケに残ってるのを忘れたまま,服を洗濯に出してしまうときがあった.
知らないでしょう!?...洗濯機の中のジャコの怖ろしさをっ!
たった2,3尾の身とウロコが水流でほぐれ,幾千の断片となって浮遊し,洗濯物に付着するのである.
最初のうち,母は洗濯物に着いたキラキラが何かわからなかったらしい.やがてその正体が判明すると,どちらかというと温厚だった母もさすがにブチ切れた.後始末の大変さくらいはわかったので,申し訳ない気持ちで一杯だった.
ただ,その癖はなかなか直せなくて,中学生になっても同じことを仕出かしたことがあった.そのときはキラキラしたままの制服を渡されただけで,何も文句は言われなかった.
母はきっと,,,情けなかったのだろう.

(3)に続く
 

町内犬地図 (1)

話のきっかけに,アル中歴のあるコラムニスト小田嶋隆氏の一文をお借りする(さすがプロ,ビール片手にこんな文章が書けるとわ).

***
 ビールの問題は「きりがない」ことだ。
 ビールは確かにウイスキーや日本酒に比べればアルコール度数の低い酒だが、逆にいえば、この酒は浴びるほど飲むことによってはじめて酒たり得る酒だ。頭が痛くならないと飲んだ気がしないのだ。ビールに適量はない。飲み足りないか、飲み過ぎるかのどちらかなのだ。
 しかもビールは、自宅の冷蔵庫にはもちろん、自販機にも喫茶店にも映画館にも、ドライブインやそばやにも、ある。ビールは私が行くあらゆる場所に、あまねく存在し、私に向かって、
「冷えてますよ」
と呼びかけることをやめない。
「勝手に冷えてやがれ」
と、思うときもあるが、せっかく私のためにそうやって冷えてくれているものを、拒み続けることができるだろうか。
 まとまりのない話ですまない。そう。お察しの通り私はビールを飲みながらこれを書いている。本当にすまない。

***

なるほど酒好きには世の中ってそんな風に見えてたのか.
まろはからっきしの下戸だからビールたちは一向に呼びかけてくれないが,"ビール" を "犬" に置き換えれば,その感じだけはわかるような気がする.

(2)に続く
 

Tuesday, October 30, 2007

じぇち子とカイ坊 (3)

こんな風に,人への接し方が正反対のじぇちとカイ.

なのにこの2頭の印象はとても良く似ている.
どこがって言葉にはしにくいけれど,多分,人に対する思い入れとゆーか,意識の仕方とゆーか,とにかくそんなところに余分な力が入ってる感じ.
それがまっすぐ表に出るか,一回ひねって出るかの違いはあるけれど.

そしてはっきり共通してるのが,,,抗いがたい魅力.
2頭を眺めていると,のど元に迫り上がる愛おしさで身体が火照ってくる.
そして自分の中ではすでに確信めいたものまであるが,これがボーダーコリーなんじゃないだろうか?

人に対する意識の過剰さ.
自分に関心を惹きつけるための悪魔のような勘と人たらしの技.
とにかく人と絡んでいたいという欲望.
ともすれば作業能力や頭の良さに隠れてしまうけれど,何百年もファーマーたちの心を捉えてきたのは,実はここなんじゃないかと思う.

もちろん彼らの魅力は,仕事ができてタフで賢いところ...だろう.
でもそれだけで身勝手でジコチューな人間様が,何世代にも渡って,しかも何頭も傍に置いておくとは思えない.
いや,そうかもしれないけどそうは思いたくない.

いくらできるったって所詮は犬だ.
思い通りに作業してくれるわけじゃないし,うるさいし,汚いし,餌も食らえば糞もする.
だからそれ以前に,彼らはこの犬たちが大好きだったのに違いない.
「仕事に役立つ」なんてのは,ちょっとした口実なんじゃないのかな.

--

じぇちとカイのもう一つ共通点,それは持って生まれた家畜に対する集中力である.
羊や鴨を目前にすると,2人とも気持ちの高まりで身体が震えてくる.
言ってみればこれは,家畜に対する "過剰な意識" だろう.
偏執的と言ってもいいかも.
そしてこれが,どこかで人に対するそれと繋がっているような気がする.

うん,きっとそうだよ.

本能や性格で一括りにできる部分とはちょっぴりずれた辺りで,この希少で加減の難しい気質が大事に育まれてきたに違いない.
何百回も何千回も方向修正しながら.
家畜追いの能力を追求することが,同時に,この愛すべき性質を護りながら育てることになったのだろう.

だからきっと,ハーディングが必要なんだ.
昔ながらの牧畜が廃れてしまった今でもね.
この子たちがいつまでもボーダーコリーであるために,そして私たちを魅了する犬であり続けるために...

じぇち子とカイ坊(2)

一方,風のようにファームにやってきて,未だに風のように駆け回っているカイラ.
この娘の距離はじぇちと対照的である.

バックヤードに出してフリーにすると,30秒に一回駆け戻ってきて泥まみれの手でタッチしないと気がすまない.
部屋の中では,後頭部をぐりぐり押し付けながら人の膝によじ登ってくる(膝上から他の犬を見下ろすのがお気に入りみたい).
ファームのメンバーと初対面したときなんか,いきなり膝の間に割って入ってきて喜ばせてくれた.

カイはためらい無しに人に来る.
嘘のばれた子供のように頭を垂れトボトボ歩くじぇちとは対照的だ.
こちらの目を見据えながら,弾むように最短距離を駆けてくる.
そのまま,群メンバーを押しのけるようにして身体を押しつける.

臆面も無く人に甘える様を見せつけられ,修行の足りない男たちは動揺を隠せない.
年若いぐはまぁ仕方ないとして,年長のサンまでが目をうるうるさせて膝に乗ろうとしてくるのはいかがなものか(悪いけどおまえはダメ.いや,嫌とかそーゆんじゃなくて物理的に無理だから).

そう言えばカイが来た頃から,男2頭の関係がどことなくギスギスしている気がする.
情けない...

じぇち子とカイ坊(1)


じぇちのことは,もうあちこちで書いてきた.
どうも彼女のことを考えると心乱れるようで,どの文章も壊れている.

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思えば初対面のときから,彼女にはどこか幸薄いイメージがあった.
フォークリフトが走り回る空港の貨物置き場に置かれた犬用ケージ.
その一番奥からこちらを窺う目つきには,子犬らしいオープンな無邪気さはなかった.

同じ一つ屋根の下に暮らしながら,できれば一人にしておいて私のことは放っておいてと,居間に集ったメンバーを土間の隅から上目使いで見ていたころが懐かしい.

こいつははっきり言って悪い.
それも "ぐ" のような可愛げのあるヤンチャではなくて,そーだなー,むしろ腹黒いという感じ?

ナメたお腹の 出し方で あなたのウソが わかるのよ~♪

でも・・・でもさ・・・,じぇちはカワイイのよ.
いくら裏切られても,いくら翻弄されてもね.

こんなこと書き残すと後で恥ずかしくなって悶え苦しむのが目に見えているのだが,,,そんなじぇすがどーにもこーにも可愛いくて仕方ないのである.

--

嗚呼みっともなし.
でも本当に彼女は憎めない.
人の言うことなんかキッパリ無視する不良娘なのに.

感じが伝わるかどうかわからないけれど,彼女は人との距離のとり方が独特である.

家の中でもそれとなく離れていて...寄ってきた時に手を伸ばすとスッと避け...撫でたら迷惑そうなのに背を向けるとひゃんひゃん文句を垂れ...寝ている人の腹の上をずかずか歩き...おやつをねだる時はずーずーしくアゴを乗っけて...何を考えているのかサッパリわからない(多分,何も考えてないのだろう).

人のことを気にしてるくせに無関心を装ったり,そっけなくしたり,ときに「ずるく」振舞う.
こんな押したり引いたりの攻撃に,おじさんはあえなく陥落するのです.

Monday, May 14, 2007

春の風

日曜夜11時.
慣れない部活に疲れた娘が早々に寝室に引き上げ,昼間のゲストの応対に疲れた犬たちはクレートに入って眠りこんでいる.
同じくゲスト応対...とゆーかビールの後に羊を追い掛け回して気持ち悪くなったHiroさんは呆然としている.
本当だったら物音一つしないはずの居間に,隅のクレートからごご,ずご,ごごご,というおっさん臭い音が響いてくる.
一ヶ月ほど前から加わった新入りのイビキである.

というわけで紹介します.
カイラ(Caoire)という7ヶ月齢の子犬.
いつもは犬のことなんか何にも言わず愛想もクソもないブリーダーが,珍しく雄弁に "she is small but tough" と一言書いて寄こしたとおりの鉄砲玉のような娘である.
先住犬たちにもまったく物怖じせず,全身を「?」にして何にでも鼻を突っ込み,眠るとき以外は決して止まらず,機を見て飼い主の懐に飛び込んでくる,ひじょーに子犬らしい子犬.

顔は...大変申し訳ないが...ぶちゃいく.
この若さにしてすでにこすっからい悪党顔だ.
でも誰かさんと違って,視線をまっすぐこちらに向けてくれるからうれしい.

意図したわけではないが,結果的にはりん姉と入れ替わるような形になった.
その他にも身の回りのいろんなことが重なり,いよいよファーム暮らしの第2フェーズが始まるんだろうという予感とともに飛び込んできた新しい風.
爽やかな涼風じゃなく,黄ばんで生暖かい風だったけど.

ところで,鉄砲玉がファームで最初に心を奪われたのが...ぐび穴.
オリジナル版は制作者の気質そのままにダラダラと広がっていったが,彼女はあくまで地球の中心に向かって鋭く掘り下げていく.
そう言えば彼女の行動のすべてがそんな感じ.
無尽蔵の集中力と体力が,小さな身体に詰まっている(と良いなぁ).

部屋に入れようと声をかけると,穴から上げた鼻面(というか穴から引っこ抜いた頭全体)にべったりこびりついた泥がまぶしい.
「乾くまで入るなっ!」って,子犬のうちから締め出される犬も珍しいよな.
 

Wednesday, March 21, 2007

三角関係

彼のために断っておくと,さん=アニキは "良いヤツ" なのです.

人には忠実だし,他犬には威張らないし,身体はごついけれど家の中ではどちらかというと身を縮めるようにして生きている.
見知らぬ客犬にも一番親切だ.
作業のときは誰よりも一生懸命だし,何事にも真面目に取り組むし,力持ちだし,おまけに人のことが大好きで声をかけてもらえるのを心待ちにしている.
変なユーモアまであって,食餌の後にヤケにうるさいと思ったら,クレートの外に飛んだたった一つの飯粒に向かって全身を矢印にして吼えていたりする.

こうやって並べてくと,ほらね,彼って良いヤツでしょ?
でも一緒に暮らしてると,そこはかとなく暑苦しいとゆーか,ときどき存在自体が疎ましくなるとゆーか.
何なんだろーな,これって.
気の毒よなぁとは思いつつも,身体を擦りつけて甘えようとする彼に対しては,つい「あっち行ってろ」と邪険にしてしまう.
すると,ここがまたいかにも彼らしいのだが,教えたわけでもないのにいつのまにかそれをコマンドと解釈していて,器用にもその場からざざざざざっと後ずさりしてみせ,真面目くさった顔で次の指示を待っている.

それがうぜぇっつーんだよてめーは!!
...こほっ...失礼.

一方,じぇち.
こいつははっきり言って悪い
それも "ぐ" のような可愛げのあるヤンチャではなくて,そーだなー,むしろ腹黒いという感じ?
大体,こっちの言うことなんか聞いちゃいないし,牧場内でフリーになると捕まるもんかと逃げ回るし,いけないとわかってるのに目を盗んで(てゆーかほとんど開き直って)ウンチ食いを強行する.
真正面から目を覗き込んでくるりん姉やアニキと違って,横目&上目使いでチラリチラリとこちらの顔色を伺う.
彼女には声を荒げたことすら無いのだから,何か後ろめたいことでもあるのか!と問い詰めたくなる私を誰が非難できましょう.
ただいつもコソコソしてるのかと言えばそーではなく,寝ている人の上を平気でスタスタ歩いていったり,自然体でテーブルの上に飛び乗ったり,はぁぁ?っつーくらい図太いところもある.
彼女には翻弄されっぱなしである.

でも・・・でもさ・・・,じぇちはカワイイのよ.
いくら裏切られても,いくら翻弄されてもね.

普段はなかなか寄って来てくれないから,彼女にはついやさしい声で「いいから,こっちおいでよ」と声をかけてしまう.(さんアニィと対照的やね)
上目使いでやって来る彼女をつかまえて気持ちを込めて撫でる.
でも,せっかく来てもすぐに放免してしまうんだな.
だって「ヤだなー,もういーかなー,用事があるんだけどなー」と顔を背けて微妙に身体を硬くする彼女を見ていると,自分が借金のカタにさらった貧乏娘をいたぶるヒヒ爺みたいに思えてくるから...

そんな彼女ですが,たま~に(ほんとにたまに)ピトッと身体をつけて甘えてくる.
オジサンただもうそれだけで嬉しくて,身体ぐにゃぐにゃの何でも大目に見てやろーじゃねーか星人に変身してしまうのでした.

そこで格言: この世には2種類の犬がいる.得な犬と損な犬である.

P.S.
ところで,そんなじぇちが気を許して一番信頼してるのがさんなのです.
教えてくれ,あんな男のどこがいーんだ!?

Tuesday, January 02, 2007

ぐびちとぐび穴のあやしい関係

どうも~,ぐれぐです.
よろしくな.

この冬はあったかいなんてゆだんしてたら,さすがに寒くなったね.
きのうなんか,せなかにぞくっときたと思ったら土間でちびっちまったよ.
いつもはがまんできるのに,ざまーないね.

オレは,寒いからといって部屋でゴロゴロなんかしない.
やること一杯なんだから.
ごはん食べたり,ウンチ出したり,外で走ったり,部屋で遊んだり,出かける家ぞくを見おくったり,客を迎えたり,そんなのだけでも大変なのに,たまにはニワトリにカツ入れなきゃいけないし,ネズミの匂いをとったり,外の見張りもこなさなきゃいけない.
そうやって数えてくと,1日ってすごくたくさんのことがつまってるんだけど,それがふと気がつくと何日も何十日も何百日もすぎちゃってたりする.
なんかだまされたような気がするけど,ま,世の中,そういうもんかもね.

2かいに住んでたまっしろい猫や,ケンカっぱやいガングロ羊たちがいなくなって,そのかわり,がーがーしゅーしゅーうるさい鳥がいたりして,いつのまにかファームのメンツが替わってる.
オレをけっ飛ばしやがったアホ面のにしきだけは,あいかわらず,ず~っと草を食みつづけてるけど.

そーいや,にしきにけっ飛ばされたオレはからだも小さかったし,ジャンプも低かったし,おしっこの回数も多かった(と思う).
このオレとはぜんぜん違う.
あれだけこわかったりん姐さんも,気がつけばオレよりチビになってる.
なんとゆーか,なんだかかわいく思えちゃったりするんだよね,わるいけど.

そんなことを考えだすと,あたまがグルグルしてくる.

つまり,オレがオレだと思っているオレは,ほんとにオレだったんだろーか?ってね.
もしかしたらそいつは,オレよりからだがちっこくて,ジャンプが下手で,おしっこの近い別のオレだったのかもしれない.
まっしろな猫がいるファームと,まっしろな猫がいないくて変な鳥がいるファームって,同じものなんだろうかそれとも別なんだろうか...
オレが両方のファームにいるんだから同じかな...ってそうか,そのオレとこのオレは違ってるかもしれないんだから,それはわからないのか...
う~ん???

思いきって聞いてみたら,オヤジはこう言った.

「それはさーぐれぐ,きっと "とき" のせいだよ」

とき? なんだそりゃ?
それってどこにあるんだ? 食えるのか? 匂いは?
いきおいこんで質問すると 「犬には "とき" はわからんのだ」 と言ってにげるんだけど,オレは,オヤジが困ったようなあせったような表情をするのを見逃さなかった.
そうか,それはきっととてもだいじなもので,どこかに隠してあるにちがいない...

だからオレは庭を掘る.
前あしで,ばっばっばっばっばっばっばっばっばっばってね.
それ見てオヤジはやっぱり困ったような顔をするから,たぶん "アタリ" だ.
きっと何か隠してる.
ほらもう少し,ばっばっばっばっばっばっばっばっばっばっ...
穴はすごくでかくなって,オレのからだがすっぽり入るくらいになった.
そのうち,前あしがいたくなって舌がでろんと出ちゃうけど,あたまがグルグルするよりはずっと気分がいい.

そういえば,穴ぼこってたしかにそこにあるんだけど,見ることもさわることもできない.
知ってたか?
もしかしたら "とき" ってこの穴ぼこみたいなものかもしれない.
そうだ,これをどんどん大きくしていったら,"とき" がどんなもんかわかるかもしれない.

よーし,もっともっと掘るぞー.
忙しいから,またな.

Thursday, December 21, 2006

じぇちの一分

田舎娘が3回目の誕生日を迎えた.

同じ一つ屋根の下に暮らしながら,できれば一人にしておいて私のことは放っておいてと,居間に集ったメンバーを土間の隅から上目使いで見ていたころが懐かしい.(...って,ついこの前のことだけど)
そんな彼女もようやく,ほんとにようやく,みんなと一緒にくつろげるようになった.

思えば初対面のときから,彼女にはどこか幸薄いイメージがあった.
フォークリフトが走り回る空港の貨物置き場に置かれた犬用ケージ.
その一番奥からこちらを窺う目つきには,子犬らしいオープンな無邪気さはなかった.

もちろん犬それぞれの性格にもよるのだろうが,長い時間を一人ぼっちで輸送されることは,幼犬の心には大きすぎる負担なのかもしれない.
街のマンションからファームののんびりした環境に移ってからも,あまり人に寄りつこうとしない頑なな態度はなかなか変らなかった.(理由はわからないけれど)

今,彼女はソファに腰掛けテレビを見ているHiroさんの横にぺったりとはり付いている.
身体を撫でられながら,穏やかに目を細めてウツラウツラしている.
大進歩だね.
そんなのフツーじゃんと笑われそうですけど,そのフツーのことができるようになるまで,彼女には長い長い時間が必要だったのです.どうか褒めてやってください.

ただHiroさんへの態度は随分と軟化したけど,週毎にしか会わない私に対してはまだぎこちなさが見え隠れする.
もちろん,顔を見れば歓迎してくれるし,足元に倒れこんでヘソ天になったり,撫でてよとばかりに頭を擦りつけてくることだってある.
しかしそれは,見知らぬ客に対しても同じだし,リラックスするというのとはまたちょっと違う.
どこか身体にチカラが入っているというか,ざーとらしいというのか.
「心まで許したわけじゃないんだからね」...ま,どーせそんなところかな.

ひょっとしたら,それが彼女流のケジメなのかもしれない.
ほんとに不器用な娘ですから.
あと何年かすれば,ぐれぐのように屈託なく甘えられるようになるんだろうか?