Tuesday, November 16, 2004

じぇちぶーの魔法 ・・・のとりこになった男

今のうちにじぇすについて書いておこうと思う.
現在10ヶ月齢.
身体は随分と大きくなったが,頭の中はまだ子供である.

今のところ彼女には特に役目が無い.
んが,いつも忙しそうにしている.
りん姉との駆けっこ,さんとのレスリング,猫とニワトリの監視,格闘技のような食事,屋内外問わず自由自在のトイレ,自然体の脱走,などの日課をせっせとこなしている.そのわずかな合間に,発作的に人間に甘えに来るか,さもなくば力尽きて行き倒れている.寝るときと誰かを監視するとき以外は,他に面白いことが無いかと小さな三白眼がいつもクルクル動いている.

身体は硬いけれども身のこなしは綺麗だ.りんと爆走しながら身体を前転させ寝技に持ち込むときの動きなんか,危ないのを忘れて見惚れてしまう.70センチの囲いを飛び越えるときは,普通に歩く感じで四肢がふわっと持ち上がる (そしてそのまま逃走する...).

問題は顔である.お世辞にも美形とは言えない.基本的に立ち耳のキツネ顔なのだが,配置が不器用なのだろうか,どうもこすっからい悪党面なのである.さすがに寝顔はかわいい,,,と言いたいが何だかじじむさい.まぁブサイクの部類だろうな...

感情表現も不器用である.
子犬なんてどいつもこいつも "遊んで〜" 攻撃を仕掛けてくるもんだと思っていたが,彼女は遠慮して距離を置きたがる.甘噛みなど想像もつかない.
人間に関心が無いかというとそうではなくて,いつもチラチラとこちらを窺っている.
撫でられるときは腹を見せながら "雪崩れこんで" くるが,ウットリとはできない. どうも身体に力が入っているのである.

で,何が言いたいかというと,,,こんなこと書き残すと後で恥ずかしくなって悶え苦しむのが目に見えているのだが,,,そんなじぇすがどーにもこーにも可愛いくて仕方ないのである.
良く回転する頭に不器用な顔.
甘えたいけどもうまく表現できず,でもときどきたまらなくなってダーッと来るみたいな性格.
ケモノらしい激しさや嫌らしさやずるさが見え隠れする表情.
  ・・・
ナマイキ言うと,とても犬らしい犬と言おうか,彼女とつきあうと何だかたっぷり犬を堪能したという気にさせてくれるのである.

彼女を叱ることはとても難しい.
変わり身が早くてタイミングを失うのと,なによりカーイくて叱れないのである.
ま,こーしてうちの犬はみんな堕落していくのですけど.

Monday, September 20, 2004

みんな遊べ!

今年の夏,急に身の回りの動物が増えてしまいました.
これまで犬猫小鳥としか暮らしたことが無かった私たちにとっては,大した変化です.

実は羊たちを迎えてまだ一週間という頃,子羊を1頭死なせてしまいました.
前夜まで他の羊と一緒に草を食んでいたのに,朝にはもう息がありませんでした.
背の高い叢の中に小さな身体がコロンと転がっていたそうです.

嘆くひまも無いほどあっけない出来事でした.
解剖しても原因はわからず,たぶん熱中症か肺炎だろうと言われました.
痛みに強く我慢強いと言われる羊ですが,環境の変化と猛暑が重なって最後の体力まで使い切ってしまったのでしょう.

その後もキツイ日照りが続き,残った羊やヤギたちも代わる代わる下痢をして体調を崩しました.
"生きる" ということの重さと軽さをあらためて感じさせられたような.
エントロピー増大の法則に抗って自己複製を繰り返す有機組織体を何処のどなたが作られたかは知りませんが,一人一人は結構大変なんだかんなーと,ついグチの一つもこぼしたくなってしまいます.

もちろん動物たちにはそんな感傷なんか無用でしょう.
相変わらず厳しい日差しの下,草を食み水を飲み,今日も黙々と生きています.


彼らを見ていて一つ気づいたことがあります.
それは, (あたりまえかもしれないけれど) どいつもこいつも "遊ぶ" ということです.
狩猟動物である犬猫だけでなく,羊もニワトリもヤギどんもウサウサも.

ま,遊びと言っても慎ましいものですけどね.
唐突に駆け出したり,無意味にジャンプしたり,仲間にごっつんこしてみたり... でも,あれらは絶対 "遊び" だと思うんです.
何かの機会にフと訪れる生きることの喜びみたいなもんが,彼らの身体をつき動かすんじゃないでしょうか.
淡々と過ぎてくように見える彼らの暮らしの中で,そこだけがキラリと光っているかのような印象を受けます.

あの子羊にも,そんな瞬間(とき)があったのだろうか?

Wednesday, July 21, 2004

あらためてりん

Hiroさんに言わせると,自分はりんをえこひーきしているそうだ.

そんなつもりは無かったけれど,そう言われてみれば, TV観るときにソファで横にはべらしたり,隠れて氷をやったり, 夜にりんだけ出して一緒に寝たり...たしかに他の2頭に対してちょっと不公平だったかもしれない.(笑)

りんは最高の犬か? と聞かれればう〜んと口ごもってしまう.
さんやじぇすに較べると頭悪そうだし,素直じゃないし,ガタイも華奢で身体能力も劣る. 性格だってキツイ.
それでもやっぱり,りんなんだなぁ.

「1頭目の犬は格別」 という人もいるが,自分の場合はよくわからない.
ただ,彼女と一緒に色んなことを経験し,同じ場所に立って同じ景色を見て, 怒ったり喜んだり落胆したり,とにかくこの6年余りをつかず離れずで生きてきたことは確かだ.
新しい生活が始まろうとしている今も, その原因を遡ればりんの存在は決して小さくない.

そんなこんなが彼女との関係を格別なものにしているのかもしれない.
ま,単なる腐れ縁かもしれないけど.

Monday, May 31, 2004

困る犬(2)

ついでだから, "人間が" 困る犬としてもさんに登場してもらおう.
(すまんねーいつもネタにして.だっておもろいんだもん)

彼は素直でいいヤツだと思うんですが,自分の衝動にも素直と言おうか,ときどき場違いに力んでしまうところがあります.それを飽きもせず毎度毎度やられると, その場で絞め殺したくなる どーしたもんかとため息が出てしまいます.

例えば,トイレなどで外に出すと彼はずっと動き回ってます.
持って来い遊びなどしなくなって久しいのに,木切れやらダンボールやらを運んできてはガシガシやって見せ,半歩下がってクラウチングポーズをとってます.さすがにこちらが誘いに乗らないと諦めますが,その後,ギャロップで庭を半周し,忙しなく草を食み,りん姉にちょっかい出して睨まれたりする頃にはもう頭がリセットされてます (この間,約30秒).また別の木切れを運んできて目の前で力んで見せる.
ったくウザいのです.

田舎に引っ越してから心身の活動量がアップしたのでしょうか,彼は少し痩せたようです.そりゃマンション暮らしと較べれば多少は刺激が多いのかもしれませんが,人間から見ると 「無意味に張り切ってる」 ようにしか見えません.おかげでまたフードを増やさざるを得なくなりました.
フードと言えばこの男の食餌前の騒がしさには閉口です.準備する間,動き回って目障りなのでクレートに入れるんですが,その中から轟々と吠えてます.この声がまた身体に比例してでかい.しまいには "ワーン" と頭の中に反響しだし,もうこうなると事態を改善しようなどという気も失せ,ただ時が過ぎるのを待つだけになります.

りん姉も吠えますが,この2頭の吠え方は明らかに違います.
りん姉はいかにも口先で何かを訴えてるという感じですが,さんの場合,身体の奥から湧き起こる衝動というか,何かに憑かれたかのように力いっぱい吠えます.黙るように言っても,止めるのは一瞬だけ.もしかしたら,ヤツには吠えてるという意識さえ無いのかもしれません.

ところで,先日,とあるシープドッグ関連の雑誌に犬の目の色に関する記事がありました.その中で明るい琥珀色(amber)の目の犬は "活動的で,目の力が強く,頭の回転が速く,そして作業欲が強烈である" と書いてありました.また,他者が自分の空間に侵入することを嫌う,少数の人にだけ深い愛情を寄せるなど,繊細な神経を併せ持っているとも.この手の記事を鵜呑みにするのもどーかと思いますが,それでも読んでいくうちに笑ってしまいました.

−なんだ,これってさんのことじゃん!−

さんの目はわりと明るめの琥珀色です.
あのしつこさや騒がしさが作業欲から来てるとすれば,さんはまさしく amber eyed dog なのでしょう.家畜で試したことはありませんが目の力も強そうです.頭の回転が速い−−と思ってるのは飼い主だけかもしれませんが...

前にも書いたように,さんはまったくといっていいほど攻撃性を見せない犬です.じゃあフレンドリかというとそうでもなくて,どちらかと言えば他人や他犬にはそっけない感じです.そう言えば,たくみに距離を取って接触を避けているようにも見えます.強くしなやかな身体,強い作業欲,しつこさなどと併せて,この種の繊細さとのバランスがさんという犬のおもしろみなんでしょう.
そう思わないとやっていけません...

Friday, April 16, 2004

困る犬(1)

タイトルは "人間が" 困る犬じゃなくて "犬が" 困るということ.

犬って暮らしのルールと自分の欲求との板ばさみになったり, うまく状況に対処できないときに,困っているように見えるが, そんな屈託に満ちた様子が結構好きだったりする.
うちの動物たちの中で一番よく "困る" のは,なんと言ってもさんである.

例えば,部屋の中に人間,犬,猫がごちゃっとたむろしているとする. ソファは小さいから,人間が座ってその余りのスペースをりん姉が占めてしまうと, もうほとんど空きがなくなる. そんなとき,さんはその狭い場所に身体を押し込んで小さくなっている.
りん姉がチラッとにらんでプレッシャーをかけたりすると, 顔を不自然に横向けてなんとかやり過ごしている.
そんな窮屈な思いをするくらいなら,部屋の隅にでも行って楽にしてれば? と思うんだけど,それでも人間に密着している方が良いらしい.

そういえば,猫のたろうは相変わらずりんには近寄りもしないが, さんにはまったく遠慮しなくなった. 遠慮どころか,わざとらしく悠然と目の前を横切ったりする. そんなとき,威嚇してはいけないことがわかっているさんは (それで叱った記憶もないから,自分でルールを作ったんだろう), 耳をピキッと反らせてかしこまっている.

ある日,例によってさんがソファで座っていたとき, 何を考えたのか,たろうがその足元に登ってきたことがある. このときばかりはさすがに追い払うかと思ったが, 彼はその場所をたろうに譲り, 自分は柔らかい背もたれの上に飛び乗って, そこでグラグラ揺れながら懸命にバランスをとっていた.
身体全体で "困った〜" って言いながら.

最近,メンバーに子犬が加わった.
こいつがまた好奇心のまま部屋中を動き回るので, さんはますます居場所を失いつつある.
多分どうしていいのかわからなくなってしまうのだろう, 部屋の中で呆然と突っ立っていることもある. ああ不憫なやつと思うのだが,ジャマはジャマなので邪険に追い払ってしまう.
りん姉なんか,子犬や猫ごときって感じで, 自分に近寄ってさえ来なければ, 完全無視を決め込んでドテ〜と寝転がってるのに.

ほんと,さんは不思議なヤツです.
身体がでっかくて牙も立派なのに,子供も子犬も猫もちっとも彼を恐れない.
外でケンカを吹っかけられても,困りきって相手を見つめているだけ.
どこか一本抜けているのか,あるいは強烈な抑制が働くのか.
三歳にしてようやく "青二才" に出世した彼だが,この愛らしい性格は変わらないでいて欲しい.

Saturday, April 03, 2004

遠い道のり

ご主人が 「お前の名前が決まったよ」 と告げたときから,あたしは Jess と呼ばれるようになった.
ほわいとろおず・じぇす...これがあたしの名前.

その頃あたしが何してたかというと,お気に入りの農場でかけっこしたり,ねずみを追っかけたり,羊のにおいを嗅いだり,仲間とレスリングしたり,ご主人と遊んだり,,,まぁ何ていうのかな,とにかく悪くない毎日だったと思う.
先のことはよくわからないけど,あたしも大きくなればここで働くんだろうなとぼんやり思ってた.

ある日,ご主人があたしを木製の箱に入れて車に載せた.
初めてのドライブが珍しくてキョロキョロしてたんだけど,気がついたらヒコーキという乗り物の中にいた.

ヒコーキには仲間もいないし,お気に入りの庭やねずみや寝わらもなかったし,その上音がうるさくてとても居心地が悪かった.
長い長い時間が経って,もしかしたらこのままず〜っとここで暮らすのかな? なんて心細くなってきた頃,ようやくクーコウというところに到着した.

クーコウに降ろされてすぐ,箱の金網ごしに知らない人たちと対面した.
その人たちはときどき箱の前に現れてあたしを覗き込んだり,箱ごと別の建物に運んだりした.
そこでは色んな人が行ったり来たりしてたけど,みんなとても忙しそうで,やっぱりあたしは一人ぼっちだった.
ここもとても疲れるところだった.

2時間くらい経ってから,またさっきの人たちがやってきて, 「さ,帰ろうか」 と言って箱ごとあたしを車に載せた.
それからもう一度長い時間ドライブしてある建物についた.その建物はとても大きかったけど,中に入ると狭くてごちゃごちゃしていた.
部屋の中には大きな犬が2頭と真っ白な猫がいて,あたしを不思議そうに見てた.

これからここで暮らすのかな?
それともすぐに農場に帰って元のように暮らせるのかな?
考えたってわからないし,クタクタに疲れたから寝ることにしよっと...


...と,いうわけで,また新しい仲間を迎えることになりました.
着いた当初はさすがにビクビクしてたけど,どこかしたたかさも感じさせてくれる頼もしい女の子です.
これからどんな子に育っていくのか,そして私たちに何を見せてくれるのか,とても楽しみにしています.

とにかく...よく来たね,Jess!

Saturday, January 24, 2004

犬と薪ストーブ

 結構ありがちだと思うけど,子供のころ, 「大きな暖炉の前でふわふわの白い犬を枕にしてうたた寝をする」 という夢を持っていた.

 子供の感覚とはおもしろいもので,ほかの夢,例えば 「プロ野球選手になってピッチャーかファーストか,悪くてもライトを守る」 は,まぁ毎週の野球クラブの練習さえまじめに出てれば実現できると信じて疑わなかったくせに,こと 「暖炉の前で犬枕」 となると,まるで現実味の無いおとぎ噺のような感じだった.当時の純和風の生活環境とのギャップが大きかったせいかもしれない.

 それが40をだいぶ過ぎた今,小さな山小屋を設けて,いつのまにかその夢に近い状態でいることに気がついた.

 大きな暖炉 → ちっちゃな薪ストーブ
 ふわふわの白い犬 → ごつごつの黒い犬
 犬を枕にして → 犬の枕になって

 と,少しずつ違うのだけれど...

 で,まぁ些細な違いには目をつぶるとして,とにかくそんな風にしてすごす時間と空間が,今の自分にはとっても大切なものになっている.
 その演出装置として,今まで犬のことは一杯書いてきたけれど,忘れちゃいけないのが火である.

 「火は5感の芸術である」 と,ある高名な歌人(まろさん)が言ったが,まさにそのとおりだと思う.
   目: やっぱり火は綺麗.色と形,その変化が絶妙.燃えはじめの元気な炎も良いし,ジワジワとくる熾火もまた良し.
   耳: 見た目に比べると地味だけど音も大事なんだなぁ.微かな音があるから,余計に静かさを感じる.火の状態によって色んな音が出るけど,虫の音みたいな 「ジジッ」 という音が好き.
   鼻: 実は木や葉っぱの燃える匂いが好きで,わざわざ煙の中に顔を突っ込んで深呼吸したりする.薪ストーブ好きの中には,わざと部屋の中に煙を逆流させて,香りを楽しむ人もいるらしい.
   肌: もちろん火は暖かいのだけれど,特に熾火になって安定した火室から受ける暖かさが格別.なんというか,暖かさをボワッとした圧力で感じる.
   舌: 焚き火で焼いたモノは何でもうまい...ってこれはコジツケか!

 いや,ほんと,たまりませんなぁ.
 でかくて,暖まるのが遅くて,薪の調達とメンテが大変で,,,便利さで言えば2重×なんだけれど.

 ところで,猫はもちろん犬もストーブが大好きだ.毛があっちっちになっても平気で真ん前に陣取っている.もしかしたら,こいつらは火が平気だったから人間と暮らせたのかな...なんてしょーもないことを思いながら,熱く火照った犬をなでている.