Friday, April 16, 2004

困る犬(1)

タイトルは "人間が" 困る犬じゃなくて "犬が" 困るということ.

犬って暮らしのルールと自分の欲求との板ばさみになったり, うまく状況に対処できないときに,困っているように見えるが, そんな屈託に満ちた様子が結構好きだったりする.
うちの動物たちの中で一番よく "困る" のは,なんと言ってもさんである.

例えば,部屋の中に人間,犬,猫がごちゃっとたむろしているとする. ソファは小さいから,人間が座ってその余りのスペースをりん姉が占めてしまうと, もうほとんど空きがなくなる. そんなとき,さんはその狭い場所に身体を押し込んで小さくなっている.
りん姉がチラッとにらんでプレッシャーをかけたりすると, 顔を不自然に横向けてなんとかやり過ごしている.
そんな窮屈な思いをするくらいなら,部屋の隅にでも行って楽にしてれば? と思うんだけど,それでも人間に密着している方が良いらしい.

そういえば,猫のたろうは相変わらずりんには近寄りもしないが, さんにはまったく遠慮しなくなった. 遠慮どころか,わざとらしく悠然と目の前を横切ったりする. そんなとき,威嚇してはいけないことがわかっているさんは (それで叱った記憶もないから,自分でルールを作ったんだろう), 耳をピキッと反らせてかしこまっている.

ある日,例によってさんがソファで座っていたとき, 何を考えたのか,たろうがその足元に登ってきたことがある. このときばかりはさすがに追い払うかと思ったが, 彼はその場所をたろうに譲り, 自分は柔らかい背もたれの上に飛び乗って, そこでグラグラ揺れながら懸命にバランスをとっていた.
身体全体で "困った〜" って言いながら.

最近,メンバーに子犬が加わった.
こいつがまた好奇心のまま部屋中を動き回るので, さんはますます居場所を失いつつある.
多分どうしていいのかわからなくなってしまうのだろう, 部屋の中で呆然と突っ立っていることもある. ああ不憫なやつと思うのだが,ジャマはジャマなので邪険に追い払ってしまう.
りん姉なんか,子犬や猫ごときって感じで, 自分に近寄ってさえ来なければ, 完全無視を決め込んでドテ〜と寝転がってるのに.

ほんと,さんは不思議なヤツです.
身体がでっかくて牙も立派なのに,子供も子犬も猫もちっとも彼を恐れない.
外でケンカを吹っかけられても,困りきって相手を見つめているだけ.
どこか一本抜けているのか,あるいは強烈な抑制が働くのか.
三歳にしてようやく "青二才" に出世した彼だが,この愛らしい性格は変わらないでいて欲しい.

Saturday, April 03, 2004

遠い道のり

ご主人が 「お前の名前が決まったよ」 と告げたときから,あたしは Jess と呼ばれるようになった.
ほわいとろおず・じぇす...これがあたしの名前.

その頃あたしが何してたかというと,お気に入りの農場でかけっこしたり,ねずみを追っかけたり,羊のにおいを嗅いだり,仲間とレスリングしたり,ご主人と遊んだり,,,まぁ何ていうのかな,とにかく悪くない毎日だったと思う.
先のことはよくわからないけど,あたしも大きくなればここで働くんだろうなとぼんやり思ってた.

ある日,ご主人があたしを木製の箱に入れて車に載せた.
初めてのドライブが珍しくてキョロキョロしてたんだけど,気がついたらヒコーキという乗り物の中にいた.

ヒコーキには仲間もいないし,お気に入りの庭やねずみや寝わらもなかったし,その上音がうるさくてとても居心地が悪かった.
長い長い時間が経って,もしかしたらこのままず〜っとここで暮らすのかな? なんて心細くなってきた頃,ようやくクーコウというところに到着した.

クーコウに降ろされてすぐ,箱の金網ごしに知らない人たちと対面した.
その人たちはときどき箱の前に現れてあたしを覗き込んだり,箱ごと別の建物に運んだりした.
そこでは色んな人が行ったり来たりしてたけど,みんなとても忙しそうで,やっぱりあたしは一人ぼっちだった.
ここもとても疲れるところだった.

2時間くらい経ってから,またさっきの人たちがやってきて, 「さ,帰ろうか」 と言って箱ごとあたしを車に載せた.
それからもう一度長い時間ドライブしてある建物についた.その建物はとても大きかったけど,中に入ると狭くてごちゃごちゃしていた.
部屋の中には大きな犬が2頭と真っ白な猫がいて,あたしを不思議そうに見てた.

これからここで暮らすのかな?
それともすぐに農場に帰って元のように暮らせるのかな?
考えたってわからないし,クタクタに疲れたから寝ることにしよっと...


...と,いうわけで,また新しい仲間を迎えることになりました.
着いた当初はさすがにビクビクしてたけど,どこかしたたかさも感じさせてくれる頼もしい女の子です.
これからどんな子に育っていくのか,そして私たちに何を見せてくれるのか,とても楽しみにしています.

とにかく...よく来たね,Jess!