Sunday, November 21, 2010

Be Our Guest

ディスニーアニメの「美女と野獣」に入れ込んでたことがある.
仕事の関係で生活環境が激変して,いろいろ不安を抱えていた頃でもある.
セリフもロクにわからない英語版のビデオを,何度も何度も,ついにはテープが擦り切れて映像が壊れるまで観た.

その中で,食器や家具に姿を変えさせられた召使たちが,捉われの身となった主人公ベルをディナーで歓待するシーンがあって,このときに流れる曲が "Be our guest" である.
これが,良い.
泣いたもんなぁ.
5分足らずの曲の終わりには,ベルと同じように,観客も満ち足りて元気になるようにできている.

なんで?と考えてみた.
一つ思いつくのは,この曲の歌詞だ.
普通,ディナーの素晴らしさを歌にするんだったら,客目線で称える歌詞になると思うが,この曲は,客を迎えるのがうれしくてうれしくて仕方がない,という召使たちの気持ちを謳いあげている.
ベルに感情移入した観客には,それがうれしい.

人が落ち込んだり生き難かったりする原因はいろいろあるだろうけど,その多くは,「自分はここにいる価値があるのか?」という生にまつわる根深い不安につながっている(と思う).それに一番効くのは,たぶん,慰めや激励や同情の「言葉」ではなく,あなたがいてくれてうれしいという(できれば大勢の)「感情」である.
"Be our guest" は,そこをピンポイントで突いてくる.

そう言えば,ディズニー再興の3部作と言われる「リトルマーメイド」「美女と野獣」「アラジン」は,揃いも揃って,「ここは自分がいるべき世界ではない」と苦悩する若者が,試練を経て社会との関係を再構築する話である.
ディズニーのことだから,これは偶然というより,綿密なマーケティングの結果だろう.
アメリカの民も悩んでるんだねぇ...

ところで,「あなたがいてくれてうれしい」気持ちを,言葉でなく態度で表現する名人が,うちにも5頭ほどいる.別に,犬に喜ばれたって,何か現実の問題が解決するわけではないが,ちょっとの間,彼らの歓迎を受け止めてやらないわけにはいかない.
特にカイたんなんか,ちったい身体を精一杯伸ばして,必死の眼差しで縋りついてくる.

毎週毎週,ごくろうさま.
はいはい,わかったからもーいーよ.

なーんて呟きながら室内に入る頃には,もう,少しだけ気持ちが軽くなっているのが,不思議.
 

Saturday, August 28, 2010

人に夢中

みわファームのコリーたちは,人に向ける関心が強い.
特にカイラはそれが顕著で,クレートに入ってようが居間で寝ころがってようが,険しくも熱い視線でずっと家族を監視している.外に行くかと立ち上がりかけると,もう先回りして扉の前でジャンプしてるし,座ろうと腰を屈めると,足元にすり寄って尻尾をパタパタ振っている.
せわしないけど,うう,かーいーよお...

うん,とてもかわいい.
確かにかわいい(もうえーか)んだけど,その一方で,これって必ずしも健康な状態ではないかも,,,とも思っている.
言葉は悪いが,人に依存,あるいは中毒してると言えないだろうか.

映像に見る農場のシープドッグたちは,ちょっとでも主人の気配を感じると,嵐だろうが授乳中であろうが,すっ飛んで行って作業に協力する.そんな彼らでも,普段仕事の無いときは,納屋の隅などで気ままに暮らしている.
つまり,居場所は離れてるのに(それとも離れているからこそ?),常に人間の動きを気にかけ,わずかな気配に鋭く反応する.

ボーダーコリーには,そういう気質を良とし,そういう風にブリードされてきた面もある.
でも家庭に入った彼らは,四六時中,人間と一緒にいる.
頭の中が人間過剰になったとしても,ありえない話じゃないと思う.

みわファームでも,人と犬の距離は近い.
その上,意志の弱い人間が約一名いて,つい犬の誘いに負けてかまってしまう.
頑張って(笑)声をかけないようにしていても,手の下にマズルを押し込まれると,知らないうちに頭を撫でいる.
クレートの中で鼻が鳴れば,どうしても視線を向けてしまう.
何気なく犬に語りかけている.
・・・
これを意志の力で制御するのは難しい.
根気強さで,彼らに勝てる人間はいない.

「シープドッグは,夜,一人になってその日の仕事をじっくり反省する」という記事をどこかで読んだことがある.本当に反省するかどうかは知らないが,カイラを見ていると,一人になる時間と空間が大切だということは,実感として頷ける気がする.
それによって人間の呪縛から解放(大げさやね)され,落ち着いて頭を整理することができる.
そういう環境が,主人の指示を尊重しながらも,自立的に作業できる犬を育んできたんだろう.

私たちの社会では,犬の自立性なんて必要無い,,,ってゆーかむしろ迷惑かもしれない.
それでもやっぱり,そういう犬と暮らしてみたいと思っている.
酔狂が過ぎるだろうか?