Saturday, January 24, 2004

犬と薪ストーブ

 結構ありがちだと思うけど,子供のころ, 「大きな暖炉の前でふわふわの白い犬を枕にしてうたた寝をする」 という夢を持っていた.

 子供の感覚とはおもしろいもので,ほかの夢,例えば 「プロ野球選手になってピッチャーかファーストか,悪くてもライトを守る」 は,まぁ毎週の野球クラブの練習さえまじめに出てれば実現できると信じて疑わなかったくせに,こと 「暖炉の前で犬枕」 となると,まるで現実味の無いおとぎ噺のような感じだった.当時の純和風の生活環境とのギャップが大きかったせいかもしれない.

 それが40をだいぶ過ぎた今,小さな山小屋を設けて,いつのまにかその夢に近い状態でいることに気がついた.

 大きな暖炉 → ちっちゃな薪ストーブ
 ふわふわの白い犬 → ごつごつの黒い犬
 犬を枕にして → 犬の枕になって

 と,少しずつ違うのだけれど...

 で,まぁ些細な違いには目をつぶるとして,とにかくそんな風にしてすごす時間と空間が,今の自分にはとっても大切なものになっている.
 その演出装置として,今まで犬のことは一杯書いてきたけれど,忘れちゃいけないのが火である.

 「火は5感の芸術である」 と,ある高名な歌人(まろさん)が言ったが,まさにそのとおりだと思う.
   目: やっぱり火は綺麗.色と形,その変化が絶妙.燃えはじめの元気な炎も良いし,ジワジワとくる熾火もまた良し.
   耳: 見た目に比べると地味だけど音も大事なんだなぁ.微かな音があるから,余計に静かさを感じる.火の状態によって色んな音が出るけど,虫の音みたいな 「ジジッ」 という音が好き.
   鼻: 実は木や葉っぱの燃える匂いが好きで,わざわざ煙の中に顔を突っ込んで深呼吸したりする.薪ストーブ好きの中には,わざと部屋の中に煙を逆流させて,香りを楽しむ人もいるらしい.
   肌: もちろん火は暖かいのだけれど,特に熾火になって安定した火室から受ける暖かさが格別.なんというか,暖かさをボワッとした圧力で感じる.
   舌: 焚き火で焼いたモノは何でもうまい...ってこれはコジツケか!

 いや,ほんと,たまりませんなぁ.
 でかくて,暖まるのが遅くて,薪の調達とメンテが大変で,,,便利さで言えば2重×なんだけれど.

 ところで,猫はもちろん犬もストーブが大好きだ.毛があっちっちになっても平気で真ん前に陣取っている.もしかしたら,こいつらは火が平気だったから人間と暮らせたのかな...なんてしょーもないことを思いながら,熱く火照った犬をなでている.