Friday, September 08, 2006

問題でないこと

一人ソファで寛いでいるりん姉.
その50cmくらい後ろから身を屈めながらジリジリ忍び寄るぐれぐ.

りん姉の尻尾の辺り,彼女が所有を主張してるのかどうか何ともビミョーな位置に,おもちゃ用の骨が落ちている.
ぐれぐはその骨の奪取に挑んだのである.

あと10cm...
ぐの企みに気づき,身体を硬くして警戒するりん.
うっすらと口を開け,りんを凝視したまま首だけを伸ばしていくぐれぐ.(あんたは亀か?)

「姐さんには他意はござんせん! あっしはこの骨だけ拝借したいんでっ!」
必死のボディランゲージが通じたのか,首尾よく骨の持ち出しに成功する.

...以上,ぐれぐの 「りん姉を地雷に見立てた肝試し」 遊びでした.

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2006年9月現在,ファームの犬の構成は,
 りん姉(熟年,女),
 アニキ(壮年,男),
 じぇち(若年,女),
 ぐれぐ(少年).

この中にあって,りん姉の立場は微妙だ.
最古参でありながら体格や体力は他の3頭に較ぶべくもない.
マンション暮し時代は何をやるにも彼女が主役だったが,ファームではほとんど仕事の順番は回ってこない.
家畜を見かけるとヒャンヒャン吼えて突進し,それで相手がビビらなければあとは無関心を装うしかない彼女は,いわゆる "弱い犬" なのだろう.

そういう犬は大抵そうだと思うのだが,他の犬に対して心が狭い.
他犬が近寄ってくると,カツカツ歯を鳴らしたりガウッたりして威嚇してしまう.
それで相手が引かなければ諍いに発展することもある.

彼女がそんな "jerkyな" 動きを多用するのは,私たちの責任かもしれない.
りんを迎えて何もかもが試行錯誤だった頃(今もそうだけど),しつけの中で私たち自身がそういう動きを使ってしまったからだ.
もちろん持って生まれた気質もあるだろうが,教えなくてもいいことを教えてしまったのは確かだ.
申し訳ないと思っている・・・って違う違う,そんなこと書きたかったんじゃない.

普通,そういう性格のメンバーが群の中でどう扱われるか? 
人間的な感覚だと,バッシングされたり避けられたり邪険にされたり,何かと窮屈な立場になりそうなものだが,実際はそうではない.
これはHiroさんに指摘されてなるほどそうかもねぇと思ったのだけれど,どうやら彼女は他の3頭から好かれてるらしいのである.

いつも退屈しているぐれぐは,わざわざ危険を冒してまで彼女の気を惹こうとする.
不器用なじぇちは適度な距離を置くことで,ガタイのでかいアニキは独特の度量を示すことで,彼女を含めたメンバー全体のバランスをとってくれている(ようだ).
そんな中でりん姉は, 「口うるさいが周りから愛されている偏屈なおばちゃん」 的なキャラを存分に発揮しながら,ノンシャランと日々を送っている.
そういえば最近はカツカツの頻度も随分と減った.
彼女は彼女なりに他の3頭を尊重しているのだろう.

家畜追いが難しい彼女にどんな役割を与えれば良いか,正直私たちに良いアイデアはない.
「力関係」 とか 「群の順位」 などという問題もあるかもしれない.
しかし人間がそんな賢しらな心配をする前に,犬たちは彼女に居心地の良いポジションをちゃんと用意してくれている.

私たちは犬の "問題" にはすぐに目がいくけれど, "問題でないこと" にはなかなか気がつかない.
そんなことがまだまだ一杯あるような気がする.