Sunday, January 30, 2000

りんとの出会い

 我が家のボーダーコリーはりんと言う.漢字で「凛」,英字表記で「Lynne」と決めた.ボーダーコリーを犬種図鑑なんかでちょっとだけ調べて,凛々しい子になって欲しいなあという気持ちからつけたんだけど,凛々しいには程遠い甘えんぼなので結局ずーっと平仮名の「りん」.
 私たちがボーダーコリーを飼いたい!と思って向かった先はご多分に漏れずペットショップ.他の流通経路なんて知らなかったし,ブリーダーという言葉すらちゃんと理解していなかった.1997年12月の話.まだそのころはあまり見かけない犬種だったので,ペットショップにお願いしてどこからか連れてきてもらうことになった.「見てから気にいったら買ってくれればいいから.」とそこのおじさんは言ってくれたけど,一目見てこの愛くるしさに負けましたわ.生後55日の毛玉でした.

 一応,一般的な「子犬の飼い方」については説明を受けたし,獣医さんの紹介もしてくれた.ペットショップにしては良心的なほうだったのかな? しかし,「子犬の飼い方」はことごとくりんに裏をかかれたような気もする.

 毎日がいろいろな意味での「なんで?」の連続だった.なんでこの子はトイレの上で寝るの?なんでこの子は教えもしないのにおもちゃをレトリーブしてくるの?なんで猫のウンチを食べるの?なんで今寝てたベッドの上におしっこするの?なんでこの子はまっすぐ人の目を見つめるの?・・・

 ボーダーコリーのことが,というよりもりんのことをもっと知りたくてインターネットの犬の世界に足を踏み入れてみた.そういえば,「やさしい子犬の飼い方,じゃなくてボーダーコリーの飼い方教えてください!」なんて,どこかの掲示板に書いたっけ.(その節から現在までなにかとお世話になっております.)

 私が入った,とある犬の世界はとっても奥の深いところだった.犬を擬人化することもなく,自分の犬達をしっかりと観察し,常に客観的な事実を元に,「犬と暮らす」という一見簡単そうなことを掘り下げていく人たちが何人もいた.

 それまでにも犬が好きで犬のことを勉強しようと漠然と思っていた私は,ある団体の資格試験を受けようと教本などを読んでいたが,この勉強が現実の犬達のことに結びつきを持ち始めたのは,この犬の世界のおかげと言っても過言ではなかった.実際にりんを我が家に迎えて,りんと向き合うことでようやく本に書いてあることを実感できるようになってきたのだ.

 ところがそれは困ったことに,今まで私のとってきた行動を私によって否定されるという皮肉なことになってしまった.

 どんな本にも書いてある,犬の社会化期.この時期に親兄弟から離されペットショップにいる矛盾.2ヶ月の子犬が心に負った傷を癒すのに何年もかかったと言う話も聞いた.そんな精神的な情緒を育む大事な時期にガラスケースに入れられている子犬たち.
 それから,ボーダーコリーはこんな犬よ,と説明してもらえる人を最初から探せばよかったこと.親犬が見られれば百聞は一見にしかずだったこと.

 だからといって,りんが悪い犬というわけではけっしてない.たまたま出会った場所がペットショップであっただけ.彼女のおかげで世界が広がり,人生を変えられたんだもの.そして私たちのところで一生を楽しく送らせてやること.これが私たちが手に入れた命と彼女の一途な愛に対する私たちの義務.

 どんな出会い方をしてもこの義務は変わらない.この世に生まれてきた犬たちがみんな幸せになりますように.

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