Sunday, January 30, 2000

こんな関係もある

 今回は,ボーダーコリーとこんな風に付き合ってみたい,というお話.
 りんと暮らし始めて,いろんな場でいろんな犬と人の関係を目にしてきました. 競技会,ドッグスポーツ,犬飼いの集まり,etc, etc. そんな中で,これまで私が一番いいなぁ〜って思ったのは,ある犬ゾリ大会に来ていた カップルでした.

 どう良かったかって言うと,大会が終わった後の2, 30分しか見ていなかったんですが, その人が後片付けを手伝ったり知り合いと駄弁ったりしている間,その子 (ボーダーコリー)は飼い主からつかず離れずといった感じでぶらぶらしていました. そして,用事が終わったのか「帰ろうか」と声をかけられて車に戻っていきました.

 実は文章にするとたったそれだけなんです.それだけなんですけど,なんというか... 良かったんですよ,その雰囲気が. 他の犬や人が近づこうが,どこかで犬が咆えようが,その子は穏やかに その辺をぶらぶらするだけでした.でも,それとなく飼い主の様子だけは伺って いて(「顔色を伺う」みたいな卑屈な感じとは違います), ときどき短い会話を交わしたります.「服従している」とか,ましてや 「ビビってる」ような様子はぜんぜんありません.ちょっと違うかも しれないけど,長年連れ添った友人や夫婦のような感じ... あえて言葉にすれば,互いに相手を尊重した信頼関係,とでも言うんでしょうか? とにかくまあ,そういう自然体で肩の力の抜けた関係でした.
 そういえば,あるTVで見たイギリスの農場のボーダーコリーたちも,ちょう どそんな雰囲気でした.「ボーダーってハイパーって言うけど,本来 こうなんじゃないだろうか?」そんな思いが頭をよぎったものでした.

 振りかえってりんとの関係を見てみると,自分なりに自然体で 付き合おうとしてきたつもりなんですが,まだまだ,そこはかとなく 緊張感みたいなものがつきまとっています.遠くには行かない,とか, 呼べば帰ってくる,という気持ちはあるんですが,それでも人や犬が近づくと 心の中で身構えてますし,りんの方も不安そうなしぐさを見せたりします. こちらは静かに歩きたいのに,りんは遊びたくて一人で興奮している,なんて こともあります.心の底から信頼しているわけではない,ということなんでしょう.

 最近,ステキな本に出会いました.著者は子供の時から牧羊犬に 囲まれて暮らし,今も有名な牧羊犬訓練所の所長をされている女性です. 一部を読んだだけですが,その中で,「訓練やしつけの前に,まず犬と 会話できるようになること」が重要であり,そのためには, 「犬と対話するような良質の時間(quality time)を多く持ちなさい」という 意の文章がありました.それに「ボーダーコリーは元来プライドの高い犬種. 敬意を持って接してあげて欲しい」とも.
 だいぶ前にこのエッセイにも書きましたが,「犬の飼い方」や「しつけ」などの How-To情報の氾濫,特にその根底に流れる「リーダーの威厳を示すために 高圧的に接する」精神(すみません.勝手な思い込みです)に違和感を 抱いていた私は,「そう,そうだよな!」と心の中で拍手を送りました.

 ボーダーコリーの長所は運動ができて頭が良いこと−−−確かにその通りだと 思います. でも,何といっても一番すごいのは,彼らが飼い主と「語り合える」こと... それくらい聡明で感受性の強い犬種であることだと思うんです. それに,もしかしたらこれは,(ハンドラーの指示に従うことが絶対である) 仕事犬や競技犬では案外難しくて,家庭犬だからこそ引き出せる長所なのかもしれません.

 そんな彼らがいつか心を開放してくれるような,肩の凝らない息の長い付き合いが できればいいなと思っています.

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